簡単な保険制度。将来や今後のために知っておくべき種類20代~60代

健康保険で守られている色々な制度

私たちが安心して暮らしていけるのは、国が保証してくれる最大の制度があるからです。

その制度とは、就職すると、勤め先の健康保険組合か協会けんぽ、公務員などは共済組合、自営業者やフリーランスになる人は国民健康保険というように、何らかの公的医療保険制度(健康保険)に加入しなければなりません。そこで健康保険制度の内容と、それに付随する制度についてみていきましょう。

◎「高額医療制度」で安心

 医療機関に支払う自己負担額(一部負担金)は医療費の3割となっています。風邪や捻挫など軽微なものならそれに掛かる医療費は少額で済みますが、もし入院や手術など高額の医療費がかかったら大変だと、多くの方が心配します。しかし、どの健康保険にも備わっているのが「高額療養費制度」によって、1か月(月初から月末)の自己負担額の上限が決められています。年収(所得)による自己負担は次の通りです。

・年収1160万円以上の場合、1か月の自己負担額は25万2600円、4か月目以降は14万100円(総医療費が84万2000円を超えた場合は、超えた金額の1%を加算)

・年収約770万円~約1160万円の場合、1か月の自己負担額は16万7400円、4か月目以降は9万3000円(総医療費が55万8000円を超えた場合は、超えた金額の1%を加算)

・年収約370万円~約770万円の場合、1か月の自己負担額は8万100円、4カ月目以降は4万4400円(総医療費が26万7000円を超えた場合は、超えた金額の1%を加算)

・年収約370万円以下の場合、1か月の自己負担額は5万7600円、4か月目以降は4万4400円

・住民税非課税世帯の場合は、1か月の自己負担額は3万5400円、4か月目以降は2万4600円です。

このことから、たとえば、総額で100万円の医療費がかかった場合ですが、年収350万円の会社員の場合は5万7600円、年収600万円の場合だと8万7430円(8万100円+(100万円-26万7000円)×1%)が1か月の自己負担額の上限となります。

 単純に100万円の3割で30万円が自己負担分と思われがちですが、実際にはここまで医療費を圧縮することができるのです。

 しかし、これらはあくまでも純粋な療養費であって、差額のベッド代(個室や少人数部屋などの費用)、食事代(病院食)、保険外(テレビや冷蔵庫、電気代など)の負担分は含まれないのでご注意ください。

・限度額適用認定証
 胃潰瘍や腸閉塞、ケガなどで入院することになれば、加入している健康保険に「限度額適用認定証」を申請し、病院に提示するようにしてください。提示することにより支払いの際に、医療費を自己負担上限額で済むこ
とになります。

・高額療養費の「多額該当」
 長期の入院など連続して高額の医療費がかかった際に、4か月目以降ならさらに上限が低くなることがあります。(これについては、現在加入の健康保険にお問い合わせください)

・高額療養費の「世帯合算」
 同じ月に2か所以上の医療機関、あるいは同じ世帯の人(同じ健康保険を使っている配偶者や子供など家族)でそれぞれの自己負担額が2万1000円以上かかり、合算した金額が自己負担額限度額を超えた場合は払い戻しを受けることができるのです。

◎収入保障の「傷病手当金」

健康保険組合、協会けんぽ、共済組合には「傷病手当金」という毎月の収入を保障する制度があります。仕事中の事故や病気、通勤・帰宅途中の事故などの業務中の事故以外の事由による病気やケガで仕事に就くことができなくなったとき、勤務先から給与が支払われない場合や支払われても少ない場合の収入を保障する制度です。
 連続して3日間休んだ後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して最長1年6カ月、目安として収入の3分の2(傷病手当金が支給開始される前1年間の給与をもとに計算した金額)が支給されます。
 

申請は、各組合に所定の用紙がありますので、必要事項を記入して、掛かり付けの医師に記名捺印してもらい勤務先に提出して勤務先が休職期間を記載後、署名捺印をしてもらいます。それを各組合に提出します。ただしこの申請は毎月行わなければいけませんので注意してください。

◎働く女性を応援する「産前産後・育児休業制度」

 結婚などして子どもが生まれた後も会社などを辞めずに働く女性を応援する産休・育休制度があります。また、休業中の社会保険料の支払いが免除される制度もあります。

・誰でも取れる産休
 産前休業は出産予定日の6週間(42日)前から、もし赤ちゃんが双子以上であるならば14週(98日)前から取得することができます。産後休業は出産の翌日から8週間(56日)となっています。この期間は基本的に就業することはできませんが、産後6週間を過ぎて医師が認めた場合は、本人の希望により就業することができます。
 産前・産後休業とも法律で保証されているもので、取得要件は特になく、「労働者」は誰でも取ることができる権利です。

・取得に要件がある育休
 正社員の場合、問題なく育児休業が取れるのですが、有期(契約期間など)で働く契約社員の場合は、雇用期間が過去1年以上ある(同一事業主)、申し出時点から子供が1歳6ヵ月になるまで引き続き雇用される見込みのある者といった要件があります。
 育児休業期間は、原則して子どもの1歳の誕生日の前日までとなっています。もし父母がともに育児休業を取得するのであれば、子供が1歳2ヵ月に達する日まで延長することができます(パパ・ママ育休プラス)。ただし、父母それぞれが取得できる期間の上限は、父親は1年間、母親は出産日・産後休業期間を含む1年間となっています。

・育休の延長と時短制度
 さらに、父母いずれかが育休休業中で、保育所の利用を希望しているものの入所ができない、育休明けに子どもを養育する予定だった者が病気やケガ、死亡などにより養育が困難になったなどの事情がある場合には、子どもが2歳に達する日までの延長が可能となっています。また、3歳未満の子どもを育てる従業員のために「短時間勤務制度」(原則1日6時間)を設けることが義務づけられています。

◎お産にかかる医療費・産休中の収入をカバー

 健康保険には、出産に伴う出費や産休中の収入をカバーする保障制度もあります。妊娠85日(4か月)以後の早産、流産、人工妊娠中絶のケースも対象となりますのでご注意ください。

・42万円の「出産育児一時金」
 妊娠中の検診や出産時の入院には、医療措置が必要になるトラブルが生じないかぎり、健康保険を使うことができません。しかし、健康保険から1児につき42万円の「出産育児一時金」が支給されるのです。妊娠・出産に伴う費用の保障制度ととらえることができます。本人が被保険者として健康保険に加入していればその制度から、扶養家族となっている場合は夫の加入している制度からこの制度を受けることができます。

・直接支払制度
 給付金が出産入院する医療機関に支払われる「直接支払制度」を利用すれば、事前にまとまった入院費が準備できなくても安心です。差額は後で精算されますのでご注意ください。

・収入をカバーする「出産手当金」
 働く女性の場合ですが、勤め先から産休中の給料が支払われない、あるいは支払われても少ない場合ですが、自分が被保険者として加入している健康保険から「出産手当金」が支給されます。給料が全額支払われるようなら出産手当金の支給はありませんが、産休中の給料の額が出産手当金額より少ない場合は、その差額を受け取ることができます。

 支給額の計算方法は少し複雑で、1年以上勤めている人の場合でしたら、支給開始される前1年間の給与をもとに1日あたりの金額を算出します。おおむね収入の3分の2を目安にすれば良いと思います。なお、国民健康保険には出産手当金の制度はありませんのでご注意ください。

◎まとめ
 生活する上で一番心配なのが病気やケガです。よくテレビのCMで報じられていますが、ガンは2人に1人がかかると言われている時代です。もしガンになれば膨大な医療費がかかってきます。それをカバーしてくれるのが健康保険制度です。また健康保険制度には業務中以外のときに病気やケガをした場合の収入保障もしてくれる頼もしい制度です。
 公的な制度ですので、きっちりと保険料さえ支払っていれば国から手厚い保障が受けられます。

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